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- どの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を作るか
株式会社にして、一気にお金を調達する
農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、5つの種類があります。
ただその中で、合名会社や合資会社はデメリットの方が大きく、今から設立する人はほとんどいません。(現時点で、合名会社や合資会社の農地所有適格法人(旧:農業生産法人)があれば、組織変更しておかないと、子供が相続できない事態になることもあります。手続きは難しくないので、今すぐに、組織変更しておきましょう)
そこで、残りの3つの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に絞り、比較してみました。
3つとは、株式会社、合同会社、農事組合法人のことです。
株式会社 | 合同会社 | 農事組合法人 | ||
---|---|---|---|---|
法律 | 会社法 | 農業協同組合法 | ||
事業内容 | 農業、農業関連事業及び、林業、 キャンプ場、造園など、農業非関連事業 |
農業、農業関連事業 及び林業のみ |
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構成員 | 名称 | 株主 | 社員 | 組合員 |
資格 | ① 農業に常時従事する社員(1年間で150日以上) ② 法人へ農地を売る、貸す、現物出資をする個人 ③ 地方公共団体、農業協同組合、農業協同組合連合会 ④ 農地保有合理化法人、農業法人投資育成会社 ⑤ 法人に農作業の委託を行っている農業者 ⑥ 継続的取引関係を有する個人、法人 (※地方公共団体など、農事組合法人には出資できない団体もあります) |
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人数 | 1名以上 | 3名以上 | ||
議決権 | 1株1票制度 | 1人1票制 | ||
配当 | 給料のみ | 給料、または従事分量配当 | ||
役員 | 人数 | 取締役1人以上 | 社員が業務執行 | 理事1人以上 |
監査役 | 監査役は任意で設置 | 必要なし | 監事は任意で設置 | |
任期 | 最長で10年間 | 制限なし | 3年以内 | |
社員 | 制限なし | 組合員とその同一世帯で 3分の1超とする |
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資本金 | 制限なし | |||
登録免許税 | 資本金の7/1000 | 非課税 | ||
税金 | 配当 | 経費にならない | 経費になる (給料はならない) |
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法人税 | 資本金1億円超 25.5% 資本金1億円以下 800万円以下の利益部分 15% 800万円超の利益部分 25.5% |
構成員の給料がゼロ 協同組合は一律 15% 構成員に給料を支払う 800万円超の利益部分 19% |
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事業税 | 通常の法人と同じ | 原則、非課税 | ||
決算公告義務 | あり | なし | ||
組織変更 | 農事組合法人への変更はできない | 株式会社への変更は可能 |
この表から分かることは、最初、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を立ち上げるのであれば、農事組合法人で運営した方が、税金は、かなり得になるということです。
特に、農事組合法人は、構成員(農事組合法人では、組合員と呼ぶ)に対する配当を、従事分量配当という制度を採用すれば、経費にすることができるのです。
給料ではなく、あくまで配当なので、農事組合法人の利益を計算してから決めることができます。
つまり、組合員に対して、従事分量配当で支払うか、通常の給料にするかは、毎年、事業年度の終了後の定時株主総会で決定して、遡って適用すればよいのです。
しかも、税務署へ事前に届け出る必要もありません。
毎年、組合員にとって、得な方を採用できます。
組合員にとっては、事業所得となりますが、農事組合法人は協同組合とみなされて、その利益に対する法人税も安くなり、事業税もかかりません。
さらに、組合員に給料を支払うと、そこには消費税が含まれていません。
一方、組合員に支払う従事分量配当には、消費税が含まれているとみなされます。
そのため、農事組合法人が支払う消費税も、かなり削減できます。
ということで、あなたは、
「農事組合法人の利益は、すべて従事分量配当で配ってしまえばよい」
と考えるかもしれません。
ただ無条件で、従事分量配当が経費になるわけではないので、そこは注意が必要です。
区分 | 性質 | 経費 |
---|---|---|
①利用(事業)分量配当 | 組合員が1年間で取り扱った農作物の量、価格、その農事組合法人の事業を利用した分量に応じて配当する | ○ |
②従事分量配当 | 組合員が1年間に、農事組合法人に従事した程度に応じて配当する | ○ |
③出資分量配当 | 組合員の出資の割合に応じて配当する | × |
①と②であれば、農事組合法人は、先ほどからの説明のとおり、協同組合とみなされて、配当を経費にすることができます。
あなたが、農事組合法人のメリットを聞けば、
「ずっと、このままでよいのでは?」
と言うかもしれません。
それでも、農事組合法人が、毎年、組合員に十分な配当を支払えるようになってきたら、株式会社である農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に組織変更すべきです。
というのも、株式会社という組織のメリットは、資金調達にあるからです。
農事組合法人では、1人1票のため、1000万円を出資した組合員も、100万円を出資した組合員も、同じ議決権しかありません。
出資した金額に応じて配当すると、協同組合とは見なされなくなってしまいます。
この制度では、この組織に、多額の出資をしようという個人や法人が現れることはありません。
資本金が大きくならなければ、銀行からの融資の枠も、それに比例して小さいままです。
一方、株式会社であれば、出資した金額が多い人の議決権がそれに比例するため、個人も、法人も参加しやすくなります。
資本金が増えて、自己資本比率が高くなれば、銀行の融資も、それに比例して増やすことができるのです。
例えば、あなたがマンションを買うときにも、頭金は必要です。
同じように、農業に限らず、ビジネスをやるときにも、自己資本という頭金を用意した方が、銀行としては融資を承認しやすくなるのです。
しかも、その頭金が多いほど、借りられる金額も大きくなるのは、当然です。
あなたが、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の規模を拡大させ、大量に収穫した農作物を出荷して、十分な利益を得るためには、株式会社の形態で行うことが、やはりお勧めです。
もし最初から、大規模なビニールハウスや生産設備を導入したり、農作物を保存する冷蔵倉庫を作るために、多くの個人や法人を株主として募集するならば、株式会社を設立してもよいでしょう。
なお、畜産経営をやる場合には、農事組合法人にしても事業税が非課税とならないなど、あまりメリットがないので、最初から株式会社の形態で農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立すべきです。
当社では、いつの時点で、どのような形態の農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立すべきか、という助言だけでなく、その設立の手続きも行わせて頂いております。
あなたが、「農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立したい、または今の組織を変更したい」と考えているならば、今すぐ、当社まで、お問い合わせください。