「農地所有適格法人を作る理由.jp」では、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の新規参入・設立のメリット、資金調達、補助金・助成金の申請、法人化した後の相続・譲渡、節税など、農業ビジネスの仕組みをわかりやすく解説しています。

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)設立コンサルティング | 日本中央税理士法人 Tel. 03-3539-3047 担当:青木

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資金調達を効率よく行う

お金が集まる、農業の事業計画書の作り方

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を作って、植物工場を建てたり、自分たちで冷蔵倉庫を用意して配送したり、最終的には加工工場を建てるのであれば、自己資金だけでは足りません。

農業では、すぐに農作物が出荷できるわけではなく、種を植えて、収穫して、配送するまでの設備投資が、先行で必要となるのです。

そのとき、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が儲かって、法人税を支払った残りのお金を貯めて、それで生産設備を買おうとすると、数十年かかってしまいます。

あなたが、給料から所得税と社会保険料を支払ったあとの貯金だけを使って、自宅を買おうとしたら、60歳の定年まで待つことになるはずです。
銀行から住宅ローンを借りて、給料から元本と利息を返済することで、先に自宅を買って、住むことができます。
つまり、お金を借りれば、利益を先行して受け取ることができるのです。
もちろん、お金を借りるだけではなく、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)、販売会社、加工工場の会社に第三者から出資してもらうことでも、資金調達ができます。

そこで、資金調達のために、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社長が、銀行、知り合い、取引先、農業のベンチャーキャピタルなどに説明に回るのですが、断わられてしまいます。
「やっぱり、農業は商品の単価が安いので、売上も上がらないし、利益率も悪いから、資金調達なんて無理なんだよな」
とグチをこぼしていた農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社長に、何度も会いました。
ただ、本当に、そうなのでしょうか?

他の業種でも、資金を上手に集めて事業を拡大している人もいれば、同じような売上と利益でありながら、断わられている人もいるのです。
実は、成功している人たちに共通していることが、3つあります。

① お金を出す人たちの気持ちを理解している
② 事業計画書を理論的に作っているため、質問に即答できる
③ 調達した資金を使って、売上と利益をどう稼ぐかが、分かりやすい

農業で資金調達に失敗している人たちは、全てにおいて何となく、申し込んでいるだけなのです。
「そんなこと言われても・・・どうやって、やればいいか教えてくれよ」
となるので、ここでは、計画的にお金を集めるための手順を説明しましょう。
もちろん、この手順に従えば、100%の確率で、資金調達が成功するとまでは保証できませんが、成功する確率は確実にアップします。

手順1 どの方法で、お金を集めるか、決める

買掛金(未払金も含む)、短期借入金、社債、長期借入金、資本金と、通常、資金調達するためには、5つの方法があります。
買掛金とは、資材や生産設備を買ったときに、支払うまでに計上されるものです。
この支払いを遅らせることができれば、資金調達したことと同じです。

お金を集める5つの方法

これは、あなたが、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)や販売会社でお金を何に使うのかということにリンクします。
資材の仕入れのためにお金を借りるならば、すぐに売上や利益に反映するので、短期借入金で調達するのです。
プラスチックハウスや冷蔵倉庫を建てるのであれば、最低でも5年以上かけて、投資を回収するため、社債や長期借入金で調達しなければいけません。
さらに、研究開発や加工工場を建てるならば、実際に売上や利益に直結できるのか、まったく予測がつかないので、資本金で調達すべきなのです。

リスクが高いということは、それだけリターンも大きくなくてはいけません。
短期借入金の金利よりも、長期借入金の金利の方が高くなります。
そして、資本金への出資となると、そもそも、返してくれるかも分かりません。
自分が出資したお金を回収するためには、その株式を第三者である個人や会社に売却することになりますが、見つけることは難しいはずです。
だから、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の価値が上がっていく証拠となる事業計画書がなければ、出資してくれることはありません。(M&Aで、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)をすべて売却する場合は別ですが、ここでは、支配権がそのままということを前提にしています)

そのため、例えば、農業の資材を仕入れるために、資本金で調達したいとお金を出す人に話をしても、「なぜ、すぐに回収できるお金なのに、銀行からの借入金でまかなわないのか? もしかして、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の資金繰りは苦しいんじゃないのか?」と不信に思われてしまいます。
これでは、資金調達に成功できるはずがありません。
資本金として出資する人たちは、「今は儲かっているので、もし自分のお金と出資してくれるお金を合わせて、大きな設備投資をすれば、売上も利益も数倍になる」という農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を探しているのです。

手順2 理論的な根拠をもとに、作成する

将来のことは、誰にも分かりません。
そのため、3年後の売上どころか、来年の売上の予想も当たる確率はかなり低いと言えるでしょう。
それでも、借入を申し込む銀行も、資本金としての出資を申し込む取引先も、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の事業計画書を提出して欲しいと言ってくるのです。
なぜでしょう?

例えば、資金調達によって、植物工場を建てて、収穫量を今年の2倍にしようという農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が、下記の2つの予想を作ったとします。

A農地所有適格法人(旧:農業生産法人)
来年の売上 = 今年の売上 × 200%

B農地所有適格法人(旧:農業生産法人)
来年の売上 = 1反当たりの収穫量×2倍×植物工場で使える面積(反)×販売価格の予想

あなたなら、この2つの予想の根拠を見て、AとBのどちらの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に、お金を出したいですか?
A農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、収穫量が2倍になるという意味は分かりますが、もし達成できなかったら、何が原因だったのかを分析できません。
単純に、「収穫量が足りなかった・・・・天候が不順だったのかなぁ」という曖昧な結論になります。
一方、B農地所有適格法人(旧:農業生産法人)であれば、収穫量は達成できたけど、販売価格の予想が違ったなど、売上が達成できなかった原因を分析できます。
それによって、「競合の農作物の販売価格をスーパーに行って見て回り、設定し直そう」というように、次に打つべき戦略を決めることができるのです。

ここでは、売上だけですが、売上原価、人件費、賃料、広告宣伝費、設備投資、税金など、それぞれの項目について、理論的な裏付けをもとに、事業計画書を作るのです。
それをやらない農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、質問されたときに、その根拠を答えられないため、資金調達できる確率は低くなります。

手順3 余裕を持って、回収できるかを計算する

銀行やお金を出資する取引先は、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が作成した事業計画書の売上や利益が下がった場合を想定して、自分が出したお金が回収できるかをシミュレーションしています。
これを、ストレステストと呼びます。
あなたは、これから資金を調達して農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の事業を拡大するつもりなので、「失敗したら・・・どうしよう」というネガティブな気持ちは持たないはずです。
あまり心が消極的になると、本来なら上手く行く事業でも失敗してしまうので、前向きに考えることはよいことです。
だから、私は、事業計画書が理論的な根拠をもとに作成されていれば、あなたが「達成して当然だ」と考えてよいと思います。
ところが、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に、お金を出す銀行や取引先は、ネガティブな気持ちを持つのです。
今まで取引があればまだよいですが、初めて資金調達を申し込んだ先は、事業計画書の通りに農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が売上と利益を稼ぐとは、まったく考えていません。
いつでも、お金を出す側が不安になるのは、当たり前かもしれません。

そこで、あなたは、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の事業計画書の売上が10%、20%、最大で30%まで下がることを想定して、収支を計算しなおしてみてください。
このとき、注意すべきことは、売上が下がったときに、比例して下がる経費(変動費)だけではなく、まったく変わらない経費(例えば、賃料などの固定費)もあることを想定して、利益を計算することです。
それでも、返済ができるのか、もちろん、30%も下がれば、返済期間は、当初の予定よりも延ばす必要があるかもしれません。
であれば、最初から、余裕を持って返済できる期間で申し込むべきでしょう。

事業計画書(単位:円)
当初の予定10%下がる20%下がる30%下がる
売上 3億 2億7000万 2億4000万 2億1000万
変動費 ▲2億 ▲1億8000万 ▲1億6000万 ▲1億4000万
固定費 ▲5000万 ▲5000万 ▲5000万 ▲5000万
税引前利益 5000万 4000万 3000万 2000万
法人税 ▲2000万 ▲1600万 ▲1200万 ▲800万
利益 3000万 2400万 1800万 1200万
返済額 ▲1500万 ▲1500万 ▲1500万 ▲1500万
収支 +1500万 +900万 +300万 ▲300万

返済できない→返済期間を延ばして、返済額を減らす

ただ、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)が、初めて取引をする銀行に対して、いきなり10年超の返済期間を申し込むのは、難しいかもしれません。
その場合には、資金調達の金額を減らせば、返済期間を延ばす必要はなくなるかもしれません。
最初から無理な条件で申し込んで断れたら、結果的に1円も資金調達できずに、何も始まりません。

実績を作って、少しずつ資金調達する金額を増やしていく方が、近道なのです。

農業に参入したい取引先やベンチャーキャピタルは多いですし、銀行も農地所有適格法人(旧:農業生産法人)への貸付を増やしていきたいと考えています。
そのため、あなたが、この3つの手順を間違わなければ、まったく資金調達ができないことはないはずです。
当社は、認定支援機関でもあり、日本政策金融公庫への融資の申請書を作成するお手伝いもしております。連携している民間のベンチャーキャピタルもあります。
あなたが、「農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の事業を拡大させるために、資金調達を申し込みたい」と考えているならば、今すぐ、当社まで、お問い合わせください。

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事例から学ぼう

伊藤さんは、3年前から個人事業主として農業を行ってきました。
最近は、作業を手伝ってもらうパートタイマーの社員も5人に増え、農作物の収穫量も上がっています。
それを見ていた、他の農業者から、「自分の畑も使ってくれ」と打診されたことをきっかけに、新しいトラックや生産設備を買い、パートタイマーも増やそうと考えました。
ただ、事業計画書を作成して、事前に試算してみると、1000万円程度の余裕資金がないと、給料の支払いで資金繰りが苦しくなると思い、日本政策金融公庫に融資を申し込みました。
ただ、担保もない個人事業主に対して、1000万円の融資は難しく、最大で500万円と言われたのです。
500万円では中途半端な金額なので、融資は断り、結果、新しい農地も借りずに、現状維持で、チャンスをうかがうことにしました。

一方、加藤さんも、伊藤さんの近くで、1年目は個人事業主でしたが、2年目から500万円(1株1万円で500株を発行)の資本金で農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を立ち上げて、農業を行ってきました。
伊藤さんに断られた農地の所有者が、今度は、加藤さんに、「自分の畑を使わないか」と打診してきたのです。
加藤さんも、日本政策金融公庫に融資を申し込んだのですが、やはり、担保があるわけではないので、500万円が限度と言われてしまいました。
ただ、加藤さんは、そこで諦めずに、昔の大学時代の友人に農地所有適格法人(旧:農業生産法人)に出資してみないかと話を持ちかけたのです。
加藤さんは、「どうせ、断われるだろうな」と予想していましたが、予想に反して、農業に興味を持つ友人が多く、1人100万円で、5人から出資してもらうことができたのです。

このとき、最初に500万円の資本金で、そのあと、別の出資者が同じ500万円を出資したとしても、持株比率は自由に決めることができます。
そこで、加藤さんは、1株2万円に設定しました。

資本金と持株比率

増資した500万円の株主を全員合算しても、33%の持株比率になります。
これにより、加藤さんが過半数どころか、3分の2の持分を所有しているため、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の経営が不安定になることはありません。
農地を広げて、農作物の収穫量を増やした加藤さんは、その2年後には、日本政策金融公庫から1000万円を借りることができました。
現在は、農地バンクの仲介で、さらに他の農地を借りることにも成功し、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の経営を拡大させています。

農業も、他の業種と同じです。
経営のスピードを早めるために、資金調達しやすい農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を作ることが、成功の秘訣の1つと言えるのです。