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- 相続の問題を解決しておく
農地の相続税と贈与税は免除されるのが、原則
父親が個人事業主の農業者の場合、そのまま、相続が発生すると、農業で使っていたトラクター、トラック、ビニールハウスなどの生産設備が相続財産となります。
また、雇用契約は、原則、農業を継ぐ子供が自動的に引き継げます。ただ、スーパーとの販売契約は、契約内容によっては、自動的に引き継げないこともあります。
一方、父親が、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立していれば、子供が、その株式を相続するだけで、すべての契約を、無条件に引き継げることになります。
ただ、そもそも遺産分割でもめると、農業を継ぐどころの問題ではなくなります。
あなたは、
と思うかもしれませんが、家庭裁判所が公表しているデータを見ると、相続で争っている事件は、年々、増えているのです。
あなたの所有するすべての農地が市街化調整区域にあれば、価値も低く、争う原因にはならないかもしれません。
ところが、一部でも市街化農地になっていれば、宅地への転用も農業委員会への届出だけで行えるので、一気に価値は上がってしまいます。
財産が増えれば、争う確率は、高くなります。
では、この遺産分割の問題を解決するには、どうすればよいのでしょうか?
最も簡単な解決方法は、父親が、遺言書を作成しておくことです。
相続人には、遺留分という最低限の取り分はありますが、お金で精算すればよく、遺言書によって、指定した子供が、すべての農地を継ぐことはできてしまいます。
さらに、もう一歩進んで、父親から子供に生前に贈与するという方法があります。
それでも、遺留分が請求される可能性は残りますが、農地を1人の子共に生前に引き継がせてしまえば、他の兄弟が文句を言える範囲はかなり狭まります。
それだけではなく、生前に子供に贈与することで、父親の財産が減り、相続税の節税対策にもなるのです。
もちろん、父親が生前に、自分のすべての財産を子供に贈与することは現実的ではないでしょう。
このとき、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の株式は、それほど価値がなく、ほとんど無税で贈与できるはずですが、農地に関しては注意すべきことがあります。
父親から子供に贈与するときには、相続税を計算するときと同様に、農地は路線価、もしくは「固定資産税評価額×倍率」で評価して、贈与税を計算します。
市街化調整区域の農地であれば、「固定資産税評価額×倍率」の評価となり、そもそも田や畑の地目であれば、固定資産税評価額も高くないため、贈与税の心配は、それほどありません。
一方、市街化区域の農地となると、ほとんどが路線価での評価となり、びっくりするぐらいの贈与税がかかってしまうはずです。
そこで贈与をためらったとしても、同じように評価して計算される相続税が高額となるだけで、同じことです。
とすれば、相続税よりも、贈与税を支払う選択をすべきです。
理由は、相続税を計算するときの農地は、父親が亡くなる日の評価となります。
子供は、当然ですが、父親も、自分の亡くなる日を選択することなどできません。
たまたま、何かの理由で、農地の価値が上がっていることもあります。
そのあとの遺産分割で、家族でもめているうちに、その農地の価値が下がることもあります。
それでも、高い価値の農地で相続税は計算されてしまうのです。
平成に入ってから、市街化区域の農地の価値は上がったり、下がったりを繰り返しています。
そのため、農地の価値が高いか、低いかは、運任せになってしまいます。
一方、贈与であれば、自分たちで贈与する日を選択することができるのです。
しかも、どの農地を贈与するのか、誰に、贈与させるのかも、契約さえすれば、誰にも文句を言われずに、自由に決定できます。
贈与であれば、一番、節税になる方法で、子供に農地を継がせることができるのです。
そして、政府としても、農業を継ぐ子供がいるのに、農地に対する贈与税や相続税が高くて継がせることができないことは、政策上、好ましくないと考えています。
農業を継がない他の子供と争って、農地の一部だけが売却されて細分化されてしまうと、収穫量が足りなくなり、農業を継いだ子供の採算も取れなくなります。
そこで、父親が生前に、農業を継ぐ子供へ農地(三大都市圏内は生産緑地指定が必要)をすべて贈与するならば、その贈与税を納税猶予する制度を作ったのです。
(※生産緑地指定とは、市区が指定すると、農地としての適正な管理、保全が義務付けられ、建築や宅地の造成などの農地以外の利用ができなくなる制度のこと)
「猶予するってことは、いつかは、贈与税を支払うことになるんじゃないのか?」
と心配することはありません。
父親の相続が発生すると、この贈与税が猶予ではなく、免除されるのです。
その子供が農業を続けるならば、相続税もかかりません。
ただし、そのときまでに、子供が農業を廃業したり、農地の20%超を売却や転用すると、納税猶予の特例は消滅して、贈与税を支払うことになるので、注意が必要です。
その瞬間に、それまで猶予してもらっていた間の利子税もかかるので、子供が農業を続けない可能性があるならば、納税猶予の特例は使わない方がよいでしょう。
もし途中で、農地を贈与された子供が病気となり、農業を継続できなくなった場合には、他の人に農地を貸せば、贈与税の納税猶予は続くことになっています。
そして、もし贈与された子供が、病気で先に亡くなった場合でも、納税猶予された贈与税は免除されることになっています。
また、すでに相続が発生してしまった場合でも、農地を継いだ子供が農業を続けるならば、相続税を納税猶予してくれる特例もあります。
ただ、遺言書、または遺産分割協議書で、農地を継ぐ子供を、相続が発生してから10カ月以内に決めなければ、この特例は使えなくなります。
最初に言ったとおり、生前に父親が子供に贈与しないならば、遺言書を作成しておくべきなのです。
納税猶予の仕組み
もし要件から外れてしまうと、多額の税金がかかってしまいます。
ぜひ、当社のような税理士法人にお問い合わせいただき、慎重に、この制度を適用できるのか、その場合のリスクはなにかを、検討すべきです。
リスクが大きければ、特例を使わずに、贈与税や相続税を支払ってしまうという方法もあります。
その場合でも、できるだけ節税対策を行うことで、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の資金繰りまでおかしくならないようにしなくてはいけません。
当社は、税理士が多数在籍する税理士法人です。
相続税や贈与税にも精通していて、農業者の申告も北海道から、鹿児島まで、何十件も行ってきました。
納税猶予の申請、物納の申請、延納の申請などの経験も豊富です。
また、税務申告だけではなく、家族が争わないための生前対策のご相談にもお受けしております。
「これから、相続について、家族で話し合いを持とう」と思っている方から、「すでに相続が発生して悩んでいる」という方まで、今すぐ、当社まで、ご相談ください。