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社員が協力して、農業に取り組める組織を作る
農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立して、農地を借りてきて、農作物をできるだけ大量に収穫しようとするならば、社長1人で農業ができるはずもなく、社員を雇い、作業を手伝ってもらうことになります。
社員だけではなく、パートタイマーの社員も含めれば、何十人単位で雇うことも多いはずです。
実際に、農作物を育て、収穫するには、それなりの経験が必要です。
そのため、社員の人たちが、できるだけ長く働いてくれることが、結果的に、美味しい農作物を作り、収穫量も多くなり、適時に出荷できることにつながるのです。
確かに、ほとんど辞める社員がいない農地所有適格法人(旧:農業生産法人)もありますが、毎年、何十人も雇い、何十人も辞めていく農地所有適格法人(旧:農業生産法人)もあるのが、現実です。
では、この2つの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で、何が違うのでしょうか?
辞める人がいない農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を調べると、ほぼ、下記の制度を導入しています。
① 労災保険などの社会保険が完備されている
② 就業規則が作成されていて、勤務条件が明記されている
③ 長く働くとメリットがある給与体系になっている
まず①ですが、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立すると、社員全員が、社会保険に強制加入となります。例外はありません。
「あそこの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社長は、加入するかどうかは、選択制だと言ってたよ」
という意見を聞くことがありますが、選択はできません。
もし、意図的に加入していないとすれば、それはルール違反です。
ただ、パートタイマーに関しては、下記の働く時間の基準を下回れば、社会保険に加入させる必要はありません。
労災保険 | 1日から(これは、全員加入となる) |
---|---|
雇用保険 | 週20時間以上勤務、かつ31日以上引き続き雇う見込み |
社会保険 | 1日の労働時間が、正社員のおおむね4分の3以上、かつ 1ヶ月の勤務日数が、正社員のおおむね4分の3以上 |
労災保険については、農業は他業種に比べて、農作業での事故が多いので、必ず、加入するようにしましょう。
こちらは、1日の勤務から加入なので、パートタイマーも含めて、全員が対象になります。
私の経験でも、ある農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で、パートタイマーの方が、生産設備に指を挟まれて、大けがをしたことがありました。
そのときも、労災保険に加入していたので、その点はよかったのですが、もし加入していなければ、とぞっとしました。
もし労災保険に加入していなかったら、お金の問題だけではなく、きっと農地所有適格法人(旧:農業生産法人)とも、もめることになります。
これは、他の社員やパートタイマーの耳にも入るので、みんなが不安を感じて辞めていくひとが、急増するはずです。
働く人がいなくなれば、当然、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は休業となってしまうでしょう。
とにかく、入社したばかりの経験が浅い社員が、事故に遭うケースが多いと予想されます。
次に、②ですが、就業規則を作るだけではダメで、運用しなければいけません。
就業規則どころか、雇用契約まで、口約束ですませている農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を、私は見たことがあります。
そのままにしておけば、あとで社員ともめる原因を自分で作っていることになります。
例えば、社員が休みを取ろうとしたときに、
「明日から、3日間の有給を取りたいんですが・・・Aさんは、すでに1年間で10日間も休んでいるようです。そもそも私は、1年間に何日間、休めるんですか?」
と聞かれたときに、Aさんとの条件が違えば、不公平感につながります。
それが原因で、この社員が辞めることになり、最後に有給を取らせて欲しいと主張されて、もめることになるのです。
そもそも、有給休暇の制度を書面で伝えていなければ、社員はどのように申請してよいのかも分からず、休みを取りにくい状況になっています。
下記は、社員が取れる最低の有給休暇の日数です。
1週間の働く日が5日以上、または1週間の労働時間が30時間以上の人 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
勤続年数 | 6ヶ月 | 1年 6ヶ月 | 2年 6ヶ月 | 3年 6ヶ月 | 4年 6ヶ月 | 5年 6ヶ月 | 6年 6ヶ月以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
ただこれを単純に社員に知らせれば、よいわけではありません。
というのも、数える始める月を決めておく必要があるからです。
それを、4月からとしていれば、4月に入社した社員と9月に入社した社員で、有給休暇の日数が違ってきます。
これを口約束で説明したら、社員は理解できるはずがありません。
また、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で働くパートタイマーにも、有給休暇はあります。
よく勘違いしている社長もいますが、1週間30時間以上、または1週間5日以上、働くパートタイマーは正社員と同じです。
そして、そこまで働いていないパートタイマーに対しては、有給休暇を減らすことができますが、ゼロになることはありえません。
週の 労働 日数 | 年間労働日数 | 勤続年数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6ヶ月 | 1年 6ヶ月 | 2年 6ヶ月 | 3年 6ヶ月 | 4年 6ヶ月 | 5年 6ヶ月 | 6年 6ヶ月以上 | ||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
これを聞くと、「社員に権利ばかりを与えてしまうことになる」と主張する農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社長もいます。
ただ、ここで知って欲しいのは、「就業規則は、社員の権利を認めるものばかりではない」ということです。
農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の運営に悪影響を与える社員を処分したり、辞めさせるときにも必要なのです。
就業規則がなければ、時間にルーズで、いつでも遅刻する社員がいても、注意するだけで、何か罰則を与えることができません。
社員を処罰するときには、事前に明らかにしておく必要があるからです。
就業規則を作ると、それが農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を縛るルールになると考えてはいけません。
逆に、それを破った社員にペナルティを与えることで、ルールを守らせることができると考えるべきなのです。
最後に、③の長く働くメリットを作ることです。
昔の日本の会社は、年功序列で給料が右肩上がりで上がっていき、退職するときには、多額の退職金が出ました。
そのため、新卒で入社した会社で、定年まで働くという人も多かったのです。
ところが、日本の会社の売上と利益が右肩上がりではなくなると、年功序列ではなく、成果報酬主義という名の下に、個人が稼いだ利益に応じて、給料を変動させるようになりました。
そうしなければ、会社は、赤字になってしまうからです。
ただ、赤字にならない代わりに、成果報酬主義を徹底した会社では、隣の席の電話は取らない、社内は険悪ムード、上司に逆らう、社員同士で足を引っ張り合うなど、悪い面も多く出たのです。
結果、会社を転職する人が増えて、今では、転職市場が活性化しています。
私は、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で、成果主義をやり過ぎてしまうのは、絶対に反対です。
個人主義で行わせるのではなく、効率よく全体の作業がスムーズに流れていなければ、売上も利益も上がりません。
例えば、収穫する人がどれほど素早く行ったとしても、そのあと、農作物を上手に仕分けて、箱に詰め込み、それを運送するという仕事と連携が取れていなければ、全体の作業のスピードは遅くなります。
しかも、収穫だけがドンドン進められてしまうと、在庫が貯まり、廃棄する農作物も増えてしまいます。
さらに、1人が暑い中で農作業を頑張り過ぎて、体調不良で倒れたら、そのしわ寄せは、他の人に及んでしまいます。
個人の利益ではなく、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の利益が最大になるように、社員同士の意思疎通ができる、風通しのよい組織を作るべきなのです。
そこで、長く働いてくれる、経験豊富な社員を増やすことで、協力体制の大切さを理解してもらうことを目標にするのです。
農地所有適格法人(旧:農業生産法人)としても、長く働くと、社員にメリットがあるような制度を作るとよいでしょう。
① 給料は毎年、少しずつでもよいので、上げていく
② 一定期間以上働いた社員には、退職金を支払う
③ 出産、子育てを支援する制度を作る
④ 3年以上になると、民間の生命保険にも加入する
これだけではなく、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社員同士のコミュニケーションをよくするために、定期的な食事会を開催するという方法もあります。
また、社長や役員が、現場に行ったときにも、声をかけることを忘れてはいけません。
農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の仕事は、農作物を作るという喜びがあります。
それを、みんなで分かち合い、社員のモチベーションにつながると、よい循環が生まれるのです。
そして、長く働いてもらい、農作物に対する知識も深くなれば、毎年の1反当たりの収穫量も増えていき、かつ適時に出荷できるようになります。
当社では、社会保険労務士も在籍し、就業規則の作成から、他の農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で取り入れている制度もご紹介しています。
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