「農地所有適格法人を作る理由.jp」では、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の新規参入・設立のメリット、資金調達、補助金・助成金の申請、法人化した後の相続・譲渡、節税など、農業ビジネスの仕組みをわかりやすく解説しています。

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)設立コンサルティング | 日本中央税理士法人 Tel. 03-3539-3047 担当:青木

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社員のやる気を引き出そう

社員が協力して、農業に取り組める組織を作る

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立して、農地を借りてきて、農作物をできるだけ大量に収穫しようとするならば、社長1人で農業ができるはずもなく、社員を雇い、作業を手伝ってもらうことになります。
社員だけではなく、パートタイマーの社員も含めれば、何十人単位で雇うことも多いはずです。

実際に、農作物を育て、収穫するには、それなりの経験が必要です。
そのため、社員の人たちが、できるだけ長く働いてくれることが、結果的に、美味しい農作物を作り、収穫量も多くなり、適時に出荷できることにつながるのです。
確かに、ほとんど辞める社員がいない農地所有適格法人(旧:農業生産法人)もありますが、毎年、何十人も雇い、何十人も辞めていく農地所有適格法人(旧:農業生産法人)もあるのが、現実です。

では、この2つの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で、何が違うのでしょうか?
辞める人がいない農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を調べると、ほぼ、下記の制度を導入しています。

① 労災保険などの社会保険が完備されている
② 就業規則が作成されていて、勤務条件が明記されている
③ 長く働くとメリットがある給与体系になっている

まず①ですが、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立すると、社員全員が、社会保険に強制加入となります。例外はありません。
「あそこの農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社長は、加入するかどうかは、選択制だと言ってたよ」
という意見を聞くことがありますが、選択はできません。
もし、意図的に加入していないとすれば、それはルール違反です。
ただ、パートタイマーに関しては、下記の働く時間の基準を下回れば、社会保険に加入させる必要はありません。

労災保険 1日から(これは、全員加入となる)
雇用保険 週20時間以上勤務、かつ31日以上引き続き雇う見込み
社会保険 1日の労働時間が、正社員のおおむね4分の3以上、かつ
1ヶ月の勤務日数が、正社員のおおむね4分の3以上

労災保険については、農業は他業種に比べて、農作業での事故が多いので、必ず、加入するようにしましょう。
こちらは、1日の勤務から加入なので、パートタイマーも含めて、全員が対象になります。
私の経験でも、ある農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で、パートタイマーの方が、生産設備に指を挟まれて、大けがをしたことがありました。
そのときも、労災保険に加入していたので、その点はよかったのですが、もし加入していなければ、とぞっとしました。
もし労災保険に加入していなかったら、お金の問題だけではなく、きっと農地所有適格法人(旧:農業生産法人)とも、もめることになります。
これは、他の社員やパートタイマーの耳にも入るので、みんなが不安を感じて辞めていくひとが、急増するはずです。
働く人がいなくなれば、当然、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は休業となってしまうでしょう。
とにかく、入社したばかりの経験が浅い社員が、事故に遭うケースが多いと予想されます。

必ず、入社と同時に労災保険には、加入させましょう。

次に、②ですが、就業規則を作るだけではダメで、運用しなければいけません。
就業規則どころか、雇用契約まで、口約束ですませている農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を、私は見たことがあります。
そのままにしておけば、あとで社員ともめる原因を自分で作っていることになります。
例えば、社員が休みを取ろうとしたときに、
「明日から、3日間の有給を取りたいんですが・・・Aさんは、すでに1年間で10日間も休んでいるようです。そもそも私は、1年間に何日間、休めるんですか?」
と聞かれたときに、Aさんとの条件が違えば、不公平感につながります。
それが原因で、この社員が辞めることになり、最後に有給を取らせて欲しいと主張されて、もめることになるのです。
そもそも、有給休暇の制度を書面で伝えていなければ、社員はどのように申請してよいのかも分からず、休みを取りにくい状況になっています。

下記は、社員が取れる最低の有給休暇の日数です。

1週間の働く日が5日以上、または1週間の労働時間が30時間以上の人
勤続年数6ヶ月1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

ただこれを単純に社員に知らせれば、よいわけではありません。
というのも、数える始める月を決めておく必要があるからです。
それを、4月からとしていれば、4月に入社した社員と9月に入社した社員で、有給休暇の日数が違ってきます。
これを口約束で説明したら、社員は理解できるはずがありません。

そこで、このようなルールを、就業規則として作成しておくのです。

また、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で働くパートタイマーにも、有給休暇はあります。
よく勘違いしている社長もいますが、1週間30時間以上、または1週間5日以上、働くパートタイマーは正社員と同じです。
そして、そこまで働いていないパートタイマーに対しては、有給休暇を減らすことができますが、ゼロになることはありえません。

週の
労働
日数
年間労働日数勤続年数
6ヶ月1年
6ヶ月
2年
6ヶ月
3年
6ヶ月
4年
6ヶ月
5年
6ヶ月
6年
6ヶ月以上
4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 7日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

これを聞くと、「社員に権利ばかりを与えてしまうことになる」と主張する農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社長もいます。
ただ、ここで知って欲しいのは、「就業規則は、社員の権利を認めるものばかりではない」ということです。

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の運営に悪影響を与える社員を処分したり、辞めさせるときにも必要なのです。
就業規則がなければ、時間にルーズで、いつでも遅刻する社員がいても、注意するだけで、何か罰則を与えることができません。
社員を処罰するときには、事前に明らかにしておく必要があるからです。

就業規則を作ると、それが農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を縛るルールになると考えてはいけません。
逆に、それを破った社員にペナルティを与えることで、ルールを守らせることができると考えるべきなのです。

最後に、③の長く働くメリットを作ることです。
昔の日本の会社は、年功序列で給料が右肩上がりで上がっていき、退職するときには、多額の退職金が出ました。
そのため、新卒で入社した会社で、定年まで働くという人も多かったのです。
ところが、日本の会社の売上と利益が右肩上がりではなくなると、年功序列ではなく、成果報酬主義という名の下に、個人が稼いだ利益に応じて、給料を変動させるようになりました。
そうしなければ、会社は、赤字になってしまうからです。
ただ、赤字にならない代わりに、成果報酬主義を徹底した会社では、隣の席の電話は取らない、社内は険悪ムード、上司に逆らう、社員同士で足を引っ張り合うなど、悪い面も多く出たのです。
結果、会社を転職する人が増えて、今では、転職市場が活性化しています。

私は、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で、成果主義をやり過ぎてしまうのは、絶対に反対です。

というのも、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、他の業種に比べて、圧倒的に協力する体制を作ることが大事だと考えているからです。

個人主義で行わせるのではなく、効率よく全体の作業がスムーズに流れていなければ、売上も利益も上がりません。
例えば、収穫する人がどれほど素早く行ったとしても、そのあと、農作物を上手に仕分けて、箱に詰め込み、それを運送するという仕事と連携が取れていなければ、全体の作業のスピードは遅くなります。
しかも、収穫だけがドンドン進められてしまうと、在庫が貯まり、廃棄する農作物も増えてしまいます。
さらに、1人が暑い中で農作業を頑張り過ぎて、体調不良で倒れたら、そのしわ寄せは、他の人に及んでしまいます。
個人の利益ではなく、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の利益が最大になるように、社員同士の意思疎通ができる、風通しのよい組織を作るべきなのです。
そこで、長く働いてくれる、経験豊富な社員を増やすことで、協力体制の大切さを理解してもらうことを目標にするのです。
農地所有適格法人(旧:農業生産法人)としても、長く働くと、社員にメリットがあるような制度を作るとよいでしょう。

① 給料は毎年、少しずつでもよいので、上げていく
② 一定期間以上働いた社員には、退職金を支払う
③ 出産、子育てを支援する制度を作る
④ 3年以上になると、民間の生命保険にも加入する

これだけではなく、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社員同士のコミュニケーションをよくするために、定期的な食事会を開催するという方法もあります。
また、社長や役員が、現場に行ったときにも、声をかけることを忘れてはいけません。

農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の仕事は、農作物を作るという喜びがあります。
それを、みんなで分かち合い、社員のモチベーションにつながると、よい循環が生まれるのです。
そして、長く働いてもらい、農作物に対する知識も深くなれば、毎年の1反当たりの収穫量も増えていき、かつ適時に出荷できるようになります。

当社では、社会保険労務士も在籍し、就業規則の作成から、他の農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で取り入れている制度もご紹介しています。
あなたが、「社員が辞めずに、協力し合う組織を作りたい」と思ったら、今すぐ、当社まで、お問い合わせください。

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事例から学ぼう

岡田農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、社員が働きやすい環境を作るために、就業規則を整備して、それが理解しやすいように、ハンドブックも作って渡していました。
新しく入社する社員がいれば、雇用契約を締結して、就業規則とその内容を丁寧に説明して、事前に納得してもらっていました。
そのため、岡田農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で働く社員の間でのルールも統一されていて、不満も少なく、平均した在職年数は、現時点で7年を超えています。
岡田農地所有適格法人(旧:農業生産法人)では、社長がチェックはするものの、原則、社員が自分たちで作った農作物の収穫時期を細かく設定して卸しています。
結果として、スーパーなどの小売店から、クレームも受けたことも、返品もほとんどありません。
取引しているスーパーも増えたことで、社長は他の地域にも農地所有適格法人(旧:農業生産法人)を設立しました。
そこに、岡田農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の幹部の社員が手伝いに行き、新規の社員教育も行いました。同じように、社員が辞めることは少なく、順調に売上を伸ばしています。
何といっても、農作物が美味しく育っているのです。

一方、新間農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、就業規則がないどころか、社員との雇用契約書もなく、社長が口約束で決めてしまいます。
パートタイマーも含めて、10人を超えたあたりから、社長は誰にどのような約束をしたのか、忘れてしまいました。
社長がずっと現場にいるわけでもないため、新間農地所有適格法人(旧:農業生産法人)で長く働いている幹部の社員が、ドンドン勝手にルールを変えてしまいます。
それも、書面として残すわけではないため、結局は、幹部の社員の気分や気にいられた人だけが優遇され、それ以外は、冷遇という組織になっています。
そのため、長く働く人もいますが、辞める人は、1年も続きません。
面接が多くなると、社長がすべてに立ち会うことができず、幹部の社員が代わりに取り仕切る事態になっています。

ある日、1人の社員が、新間農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の社長に幹部の社員の悪口を告げ口したのです。
社長は、その真実を確かめるために、幹部の社員を呼び、事情を聴いたところから、犯人探しが始まりました。
最後まで、誰が告げ口をしたのか分からず、人間関係は険悪です。
みんなで協力しようという気持ちも、体制もなく、収穫する農作物の時期もめちゃくちゃです。
スーパーに卸した農作物がまったく熟れておらず、返品されてくるだけならまだよく、注文した商品の種類も違うし、数もまったく合わない、などのクレームも頻繁にありました。
気持ちよく育てられていない農作物は、味も美味しくなく、色艶も悪いものです。
2年後には、地元のスーパーから取引を断られ、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)の売上も利益も激減しました。
そのことで、新間農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、社員の社会保険料だけではなく、給料も滞納してしまい、辞めた社員からは訴訟も提起されそうです。

このように、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)は、広い農地を借りて、そこに高価な生産設備を導入すれば、成功するわけではまったくありません。
農地を耕したり、水耕栽培の工場であっても、生産設備を動かして、適時に収穫する社員の存在が絶対に必要となります。

私は、社員を過保護にしようと助言しているわけではありません。
ただ、就業規則やそのハンドブックを作ったり、雇用契約を締結したり、新人の研修や社員研修を定期的に行うなど、当たり前のことは、農地所有適格法人(旧:農業生産法人)もやらなくてはいけないのです。