農地所有適格法人ならば、誰でも株主として出資してもらい、資金調達ができる
投稿日:2017.04.05
個人事業主として農業を行っていて、資金調達をしようと考えた場合には、親戚や友人からお金を借りるか、銀行に融資を申し込むしかありません。つまり、お金を借りるという資金調達方法しかないのです。ただお金を借りれば、毎月利息と一緒に返済していく必要があります。
一方、農業法人を作れば、同じようにお金を借りるというだけではなく、株主として出資してくれる人を探すことができます。株主であれば農業法人がもうかった利益から配当すればよく、出資してもらったお金を返済する必要もありません。ただ2つの疑問が沸くかもしれません。
① 農業法人がそこまで資金調達が必要なのか?
② 実際に出資してくれる人がいるのか?
まず①への回答ですが、農業法人には2種類あり、1つ目が一般の農業法人ですが、2つ目は農地所有適格法人となります。農地所有適格法人は名前の通り、農地を所有することができます。今後、農業を効率よく行うために大規模な事業拡大を目指したり、農地を担保に銀行からお金を借りることを考えると、農地を買っていくべきだと思います。また一般の農業法人が農地を借りた場合、①地域の他の農業者との適切な役割分担の下で農業を安定的に継続して行っていない場合や、②借りた農地を適正に利用していない場合には賃貸契約が解除される条件が付いてしまいます。それ以外にも農地の所有者から賃貸期間などの条件を付けられると、将来に不安が残ります。実際に10年間という賃貸契約をした農業法人がやっと利益が十分確保できたのが8年目で、その後2年で契約期間が終了したということもありました。苦労してやっと軌道に乗せた農地を手放すのであれば、最初から投資しないという意思決定もあり得ます。だからこそ、農地を買うべきなのですが、個人でお金を借りることには限界があり、農地適格所有法人として株主を募ることが、その近道と考えられます。
次に②への回答ですが、出資してくれる人はいます。というのも、農地適格所有法人に出資できるのは、個人だけではなく、法人も含まれるからです。しかもその法人は49%まで出資することができ、その会社から出向させた取締役が農業に従事しなくてもよいのです。
比較表 |
一般の農業法人 |
農地所有適格法人 |
農地の購入(所有権取得) |
できない |
できる |
農地の借り入れ |
できる(解除条件付) |
できる |
農業経営基盤強化準備金 |
適用不可 |
適用可能 |
肉用牛免税 |
適用不可 |
適用可能 |
ここであなたは、「農地所有適格法人を作るためには、たくさんの要件をクリアする必要があるのでは?」と思ったかもしれません。
ところが、農地所有適格法人を株式会社で作ることを前提にすると要件は3つしかなく、しかも難しくないのです。
1つ目の要件は、農地所有適格法人の売上高の過半が農業であることです。農作物を販売したり、ファームレストランの運営のような農業関連事業でも構いません。そのため、クリアできない方がおかしいでしょう。
2つ目の要件は、農業関係者以外の者の総議決権が2分の1未満であることです。
|
個人 |
法人 |
農業関係者 |
・農業に常時従事する者 ・農地提供者(農地中間管理機構等を通じて法人に農地を貸し付けている個人を含む。) ・農作業の委託を行っている農家 |
・農地等を現物出資した農地中間管理機構 ・農業協同組合、農業協同組合連合会 ・地方公共団体 ・アグリビジネス投資育成 |
通常は、農業に常時従事する者と農地提供者が過半数の議決権を所有することがほとんどです。2分の1未満を出資した会社の取締役などが、個人で農地所有適格法人に出資していることも見受けられます。
3つ目の要件は、農地所有適格法人の取締役が下記の両方を満たすことです。
① 取締役の過半数が株主となり、農業または農業関連事業に常時従事(原則150日以上)すること。
② 取締役または重要な使用人のうち、1人以上が農作業に従事すること。
これを読むと分かりますが、株主であり、かつ取締役である人物が農作業に従事しなくてもよく、そもそも農業に携わらず経営戦略などの集中する取締役がいても構わないのです。
なお、取締役の過半数とは、取締役が2人から3人であれば2人、4人から5人であれば3人と数えます。
たったこれだけで農地所有適格法人になることができるのですから、ぜひ要件をクリアしてお金を集めて農地を買い、長期的に安定した経営を目指しましょう。農業を継ぐ人がおらず、そのまま相続が発生したあと、相続人が農地を売却したいという話も増えてきています。農地所有適格法人を作って、農地を買い集め始めれば、いろいろな情報も入ってくるようになるはずです。